[ニュースレター] 2019年8月号

─2019年8月号─「地位に就くだけではリーダーではない③」

Date: August 12, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

リーダーとは何か?

 

「リーダーは育てられるものではなく、生まれつくもの。」社会科学者がわずか60 年~70 年前にリーダーシップを徹底的な調査の正当なテーマにし始めるまでは、ほとんどの人がそう考えていました。その昔、リーダーとなる人があまりにも頻繁に恵まれた同一の家系から出現していたことから、ほとんどの人がリーダーシップは受け継がれるものだと考え、社会的に根強い階級差別があったことから、誰でもがリーダーになれるわけではありませんでした。階級差別が撤廃され、リーダーが社会のあらゆる階層から出てくるのが明らかになると、リーダーシップは優秀な遺伝子を持って生まれたり立派な家庭から生まれたりするよりも、もっと複雑なものであるということが常識になりました。

遺伝子の適切な組み合わせでリーダーが生まれるわけではないとすれば、恐らく、すべてのリーダーはしつけや教育を通して習得した特定の特性や特徴を持ち合わせているのではないでしょうか。この考え方によってリーダーの普遍的な特性の調査が始まりました。しかし、何百という研究によって、リーダーとそうでない人との間には何の特性の違いもないということが判明し、リーダーシップがリーダーの中に備わっている特定の属性の産物であるという仮説は消えてなくなりました。

社会科学者たちが、リーダーとフォロワーとの間のインタラクションという観点でリーダーシップを調べ始めた時、大きな進展が見られました。結局のところ、リーダーの影響を受け入れるのも、拒否するのも、最終的にはフォロワーなのだと結論付けました。肝心かなめの問題は、次のようなものに変わりました。それは、どのような理由からフォロワーが受け入れたり、拒否したりするのか?このインタラクションの中で何が起きているのか?というものです。

フォロワーがいなければ、リーダーになれないのは明らかです。グループ・メンバーが、あなたの影響や指導、指示を受け入れようとしなければ、そう長くはリーダーとしていられないでしょう。しかし、リーダーはどのようにしてフォロワーの心をつかむのでしょうか?この基本的な質問の答えは、私たちが、すべての人間が持っているニーズを理解し、それらのニーズを満たすために努力する時に初めて、はっきりとわかるのです。

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[ニュースレター] 2019年7月号

─2019年7月号─「地位に就くだけではリーダーではない②」

Date: July 27, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

以下のリストの中のコーピング・メカニズムの多くは、皆さんも覚えがあるはずです。子供の頃に最も頻繁に使っていた特定のコーピング・メカニズムや、大人になった今でも使っているコーピング・メカニズムを確認したくなるでしょう。

 

  1. 抵抗、挑戦的態度、謀反、否定主義
  2. 憤り、怒り、敵意
  3. 攻撃、報復、反撃、権力者への嘲笑
  4. 嘘をつく、感情を隠す
  5. 他人を非難する、告げ口をする、騙す
  6. 支配する、威張る、弱い者いじめをする
  7. 勝ちにこだわる、負けず嫌い、完璧主義
  8. 同盟を組む、権力者に抵抗する組織をつくる
  9. 服従、従順、追従、おべっか
  10. 権力者にへつらう、ご機嫌をとる
  11. 同調、新しいことや創造的なことへの恐れ、事前に成功の保証を求める、権力者への依存
  12. 引きこもる、逃避する、空想をめぐらせる、退行する
  13. 病気になる
  14. 泣く

 

なぜ、リーダーになっただけでは成功したとは言えないのかが、よりはっきりしてきたでしょうか?事実上、リーダーという地位をつかんだぞ!ということは言えるかも知れません。たとえあなたがグループのリーダーシップをとる機会を得る前であっても、グループ・メンバーの目には、あなたは潜在的な管理者や支配者という新しいアイデンティティを持った人物として映るのですから。そして、あなたが権力と権限を実際に行使する前から、グループ・メンバーはすでにこれらのコーピング・メカニズムを組み合わせて使用することで対処する準備ができており、そうするようプログラムされているのです。

 もちろん、私はリーダーを志している人を落胆させるつもりはありません。むしろ、リーダーとグループ・メンバーとの間の人間関係を左右する独特のダイナミクスについて、私はただただ現実的でありたいのです。第一に私はこの本の論点を強調したいと思いますが、リーダーという地位にいるだけではリーダーとは言えません。なぜなら、リーダーは自動的にグループ・メンバーから尊敬され、受容されるわけではないからです。ですから、グループのリーダーシップを発揮して、グループ・メンバーにポジティブな影響を与えるためには、リーダーは特定のスキルとメソッドを学ばなければなりません。

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[ニュースレター] 2019年6月号

─2019年6月号─「地位に就くだけではリーダーではない」

Date: June 30, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 グループのリーダーになると、どうしてもグループ・メンバーとの関係に顕著な変化が生じてきます。以前は仲間や友人であった人たちが、突然あなたに対する態度を変えてしまいます。あなたは彼らの「上司」であり、彼らはあなたの「部下」なのです。つまり彼らが「あなたにご報告を申し上げる立場」となって、あなたは「責任を負う立場」となるのです。

 あなたがそのグループのリーダーになるために外部から連れてこられたのだとしても、広い範囲の好ましくない反応――たとえば、疑惑、不信、敵意、おべっか、消極的抵抗、不安に遭遇するのだという覚悟をしておきましょう。そして、中にはあなたが新しい仕事に失敗して面目丸つぶれになるのを、見たがっている人がいるという可能性を忘れてはいけません!

 人間というものは、本来備わっているこのような否定的な反応パターンを自然にとるものです。こうした態度は、子供の時に学習します。リーダーは、それぞれのグループ・メンバーの「インナーチャイルド(内なる子供):子供時代の経験」を受け継ぎます。なぜならば、私たちには、過去に子供だったという歴史があり、様々な大人たちと親密に多数の人間関係を持ってきたからです。その大人たちというのは、両親、祖父母、学校の先生、コーチ、ボーイスカウトのリーダー、ピアノ教師、校長、そしてもちろん悪名高い教頭もそうです。このような大人たちは全員例外なく、私たちが子供だった時代に権力と権限を持っており、そのほとんどが権力と権限を頻繁に行使してきます。そのため子供たちは皆、このような「権力者」に上手く対処するために、いろいろな行動を試みるものです。彼らのコーピング・メカニズムには効果的なこともあれば非効果的なこともあります。上手くいく対処法は何度も何度も使われ、子供たちをコントロールして支配しようとする他のすべての大人たちへの習慣的な反応になるのです。

 このようなコーピング・メカニズムは、子供たちが思春期に入っても、成人期に入っても、めったに捨てられることはありません。それらは引き続き必要不可欠な大人の人格の一部として残り、権力や権限を持っている人と人間関係を構築する際に呼び起され、あるいは無意識のうちに誘発されます。ですから、すべての大人たちは本質的に「インナーチャイルド(内なる子供):子供時代の経験」を心に抱いており、それはリーダーへの反応に非常に強く影響するのです。

 権力者と無理やり新しい関係に突入する時、人びとは生涯にわたって自然と習慣になっている同じコーピング・メカニズムを使っています。これが、新しいリーダーがグループ・メンバーそれぞれの持つ「インナーチャイルド(内なる子供):子供時代の経験」を引き継ぐ理由です。彼ら独特のコーピング・メカニズムは既に現在しており、すぐにでも使用可能な状態にあります。リーダーがコーピング・メカニズムを引き起こすきっかけを作っているのではありません。それにも関わらず、グループ・メンバーは最初ほとんどのリーダーを管理者もしくは支配者としてみなすので、リーダーに権力や権限を行使するつもりがなかったとしても、グループ・メンバーはこのような反応を示すのです。

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[ニュースレター] 2019年5月号

─2019年5月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.13」

Date: May 30, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

どのような人になりたいか?パート2

 

言うまでもありませんが、コミュニケーションで自己一致しているリスクはあります。そして、あなたはそのリスクを負うことができるか否かを真剣に考慮するべきです。自分のイメージをあなたが現実にそうであるように、オープンで、正直で、率直なリーダーになろうとすれば、あなたは本当の自分を他人にさらけ出すリスクを負います。I-メッセージの送り手は、自分自身に対しても他人に対しても「透き通ってリアル」です。人々はありのままの自分であることに勇気をもたなければなりません。つまり、人生のどの瞬間にも、感じたまま、考えたままに意思疎通(コミュニケーション)しなければなりません。そして、それに対するリスクはあります。もし、あなたが他人に対して心を開くなら、本当のあなたを知られてしまいます!他人にあなたの本当の姿を知られてもいいですか?

相手の言うことに耳を傾けるリーダーになろうとすれば、他にもリスクがあります。既にご存知の通り、アクティブ・リスニングはもっぱら話し手のメッセージにのみ注意を払うため、あなたは一時的に自分自身の考え、感情、評価、判断を保留しなければなりません。相手の話を正確に理解することが要求されます。あなたが話し手の意味する観点からメッセージを理解しようとするなら、あなたは話し手の立場(相手の価値判断の枠組みや相手にとっての現実世界)にあなた自身を置いてみなければなりません。そうしたときにのみ、話し手の意図した意味を聞き取ることができるのです。

 

アクティブ・リスニングの「フィードバック」は、あなたのリスニングの正確性をチェックする最終手段に過ぎません。それは、話し手にあなたが理解したということも確実に伝えます。

アクティブ・リスニングは、それ自身リスクを負っています。アクティブ・リスニングを行う人に何かが起こります。相手がどう考え、感じているかを正確に理解し、一時的に自分を相手の立場に置いて相手が見ているように世界を眺めてみると、あなた自身の意見や態度が変化してしまうリスクがあります。

人々は本当に理解したことによって変化することがあります。他人の「経験にオープン」であると、あなた自身の経験を再解釈しなければという気になります。他の人たちに耳を傾けられない人たちは「防衛的」です。なぜなら、そのような人たちは、自分とは異なる考えやモノの見方に自分をさらす余裕がないからです。

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[ニュースレター] 2019年4月号

─2019年4月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.12」

Date: April 30, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

どのような人になりたいか?パート1

 

あなたが選ぶリーダーシップのスタイルは、あなたが将来どんな人になるかに大きく影響するでしょう。リーダーとしてのあなたと、人としてのあなたの2つを切り離すことはできないのです。なぜなら、あなたはリーダーとして多くの時間を費やすため、その役割であなたがどのように振舞うかが、人としてのあなたを容赦なく形成するでしょう。

具体的に言うと、威圧的な権力に基づくリーダーシップ・スタイルを選ぶと、あなたは一貫して懐疑と不信の態度をとり続ける必要があるでしょう。人に話をするときも慎重でなければなりませんし、あなたが行使した権力に対する抵抗の兆し(あるいは、あからさまな不服従)を見抜くように警戒していなければなりません。このように警戒するとともに、独裁主義的リーダーにとって他の人たちは皆、限られた能力しか持ち合わせず、自己決定したり、建設的な変化や個人的成長をしたり、自主的に考えたりする潜在能力も低いとみなされます。

あなたが威圧的な権力を自分のリーダーシップのスタイルとして選択するならば、それが異なる形であなたの個人的な生活に影響を与えるでしょう。前にも指摘したように、グループの意思決定の責任を一手に引き受けたり、ポリシーや規定を実施したり、強制したりする全負担を負うことで、あなたの緊張、悩み、不安が増大し、そして究極的には肉体的にも精神的にも健康を害してしまうという代償を払うことになるでしょう。

一方、あなたは他人に対してオープンで、正直で、率直な人でありたいですか?心理学者は「自己一致」という専門用語を用いて、人が内面で考えていること、あるいは感じていることとその人が外部に向かって伝えていることの間の類似性に言及しています。あなたは、思ったままを話し、話したままを思っている人でいたいですか?それとも、嘘っぽくて他人から信頼されない人でありたいですか?正直で、率直なI-メッセージを送って、自分の立場を正確に人々に伝える人でありたいですか?

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[ニュースレター] 2019年3月号

─2019年3月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.11」

Date: March 16, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon
 
(L.E.T. bookからの引用)
 
問題解決
 
 リーダーが問題解決のファシリテーター(問題が解決されるのを見る)としてのスキルを学べば、リーダーが自分一人ですべての問題を解決しようとするよりも、仕事が実際にとてもやりやすくなります。すべての問題解決を自分一人でするには、リーダーは全ての答えを持ち、全知で、超人的な知力を備え、尽きることのない知識や経験の宝庫でなくてはなりません。繰り返し強調しますが、効果的なリーダーはどうしたらメンバーが自ら問題を解決し始め、問題解決できるチームを作り上げることができるか、グループ・メンバーの創造的なリソースをいつ、どのように求めるか、メンバーとリーダーとの間に距離を置かないような人間関係をどのように構築するかを学ぶ必要があります。全知になるという目標とは異なり、これらの目標は達成可能です。

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[ニュースレター] 2019年2月号

─2019年2月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.10」

Date: February 17, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon
 
(L.E.T. bookからの引用)
 
メソッドⅢ/権力 part 2
 
 学校でもアメとムチは教師が教室で「規律」を保つために常に使っている重要なツールです。そのような慣例は数百年の間、ほとんど変わっていません。それは、私にとっては驚きの源泉です。(2019年1月のニューズレターからの続き)
 これが意味するところは、子供たちが大人に移行する時までに誰も大人が子供を従わせるために権力を使う以外の大人対子供の対立解決モデルに触れることがありません。
ですから、子供たちは権力ではない方法を使う大人との人間関係を経験する機会がほとんどありません。子供たちが経験する全てが強制力と支配です。私が聞いたように「どうして権力や権限をもってしても先生や親の言うことを聞かなかったのですか?」とあなたが子供たちに聞いたとしても、驚くほど頻繁に「もっと権力や権限を使うべきだったのではないですか」と返答します。
 これまで35年間、L.E.T.ワークショップに参加した人は十中八九、Win-Lose対立解決法に対して有効な代替案が実際に存在することを知って非常に驚いたとしても無理はありません。ですから、リーダーが権力を使う時に影響力を失うという考え方に直面した時、リーダーたちは不信感を表明しました。実のところ、L.E.T.ワークショップに申し込んだリーダーの中には、もっと巧妙に、もっと賢く権力を使う方法を学べると期待している人もいました――全く権力を使わないことを教えられるとは思いもしていませんでした。

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[ニュースレター] 2019年1月号

─2019年1月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.9」

Date: January 26th, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

(L.E.T. bookからの引用)

メソッドⅢ/権力 part 1

時間の代償


権力は人々の中に強い抵抗を生み出し、それを行使するリーダーに挑戦するよう人々を挑発するため、そのような反応に対処するのに多大な時間と労力をリーダーが使わなければならないのも無理はありません。それでもなお、リーダーは他の権力以外の問題解決法あるいは対立解決法よりも時間がかからないという理由でしばしば自身の権力行使を正当化します。この主張は、半分事実です。メソッドⅠによる意思決定は、グループでの意思決定よりも時間がかからない一方、一方的に決められた決定を受け入れさせるのにはとてつもない時間がかかります。
権力を得ることでリーダーはより大きな影響力を持つようになるという一般的な考え方とは裏腹に、権力はリーダーのグループ・メンバーに対する影響力を喪失させます。
ほとんどの人たちは、個人的な経験から2つのWin-Lose対立解決法が人間関係を壊し、組織の有効性を下げるリスクが高いことを知っていますが、ほとんどのリーダーにとって、これらの対立解決法が最適な方法であり続けます。これに関しては多くの説明があり得ますが、以下の2つの説明がもっともらしいと思います:人は対立解決へのアプローチに対する個人的な経験がほとんどありません。ほとんどの人にとっては、最も大きい影響があることが最も大きな権限があることと同じだと考えられています。
ほとんどの子供たちは、大人が決めたことをするためにアメとムチを頻繁にたっぷりと親が投与する家庭で育ってきています。家庭内暴力についての有名な全国的な研究では、80%の親はお尻を叩いたり、ひっぱたいたりという普通の体罰手段を使っていることがわかっています。30%近くの親たちは暴力で逮捕されていたかも知れない暴力行為を子供たちに行っていました!同様に、学校でもアメとムチは教師が教室で「規律」を保つために常に使っている重要なツールです。そのような慣例は数百年の間、ほとんど変わっていません。それは、私にとっては驚きの源泉です。

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[ニュースレター] 2018年12月号

─2018年12月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.8」

Date: December 8th, 2018 | BY Dr. Thomas Gordon

(L.E.T. bookからの引用)

ロードブロック

 これら聴き手の応答の12カテゴリに含まれる暗黙の(時として非常に露骨な)意味合いは、話し手を受け入れるというよりも、むしろ話し手に変わってほしいという要望や意図になります。ロードブロックというのは、支援される人に対して考え方や感じ方、あるいは態度を変えてほしいという要望(しばしば圧力)を伝えてしまうのです。これら12種類の応答は、そのため、非受容を伝えるための手段として機能してしまいます。そして、非受容の雰囲気というのが、個人の成長や発展、そして心理的健康の促進にはほとんど役に立たないことは、もうご存知のはずです。
  では、なぜなのでしょうか? 人は、彼らを変えさせようとして恣意的な権力に恐れている時や、彼らを変えさせようとする脅威にさらされていたり、批判されていたり、こき下ろされていたり、もしくは分析されていたりすると感じている時、あまり効果的に問題解決をしようとはしないように思われます。こうした雰囲気は変化に対する防衛反応や抵抗を生み出します(レベルⅡの安全と安心のニーズを守るのです)。それと同時に、自己表現や自己探求──どちらも問題を解決するのには必要不可欠なもの──を阻害します。
 リスニングは、グループ・メンバーが彼らの問題を解決するための支援をする上で、もう一つ、問題解決の責任をメンバー(当然ながら「問題を所有する」人)に持たせ続けるという、とても重要な機能を果たします。12のロードブロックは、打って変わって、さまざまな度合いで問題の所有者からその責任を奪い取り、リーダーの手中に置きかえる傾向にあります。
 責任の中心を問題の所有者に据えておくことは、次のような理由から重要になります。
 第一に、チーム・メンバーに自分の問題を自分で解決させるリーダーは、たくさんの利益を生み出すための堅実な投資をしています。チーム・メンバーのリーダーに対する依存は少なくなり、より自律的に、より自立して、よりうまく自分で自分の問題を解決できるようになります。
 第二に、リーダーは、グループ・メンバーが仕事のオンとオフを問わず彼らの生活圏内で直面する、幅広いさまざまな個人的問題とその複雑さについて、充分に理解していることはめったにありません。そのため、問題解決の責任の中心を支援される人に据えておくためのスキルは、わずかな情報しかない問題についての答えを導き出すという不可能な課題からリーダーを解放してくれます。たとえ、相手の問題についての理解が通常どの程度制限されているかを認識している、熟練したプロのカウンセラーでも、しばしば重たいプレッシャーを感じていながら、それでもクライアントの解決策を導き出す責任を担うことはしません。

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[ニュースレター] 2018年11月号

─2018年11月号─「人にひらめきを与え、教えるトーマス・ゴードン博士のリーダーシップに関する引用 No.7」

Date: November 16th, 2018 | BY Dr. Thomas Gordon

(L.E.T. bookからの引用)

I-メッセージとギア・シフト パート3

1.   changer(変える人):あなたは時間の束縛があって、自分の数字をチェックする時間がとれなかった、ということで合っていますか?
2.   changer(変える人):他の患者の病室にいる時は呼び出しライトに気づかないということでしょうか。そして、患者が自分でできることをあなたにやってもらおうとナースコールをすると、あなたは苛立ってしまうということですね。

伝える姿勢から聴く姿勢にシフトすることは、私たちのL.E.T.ワークショップでは、「ギア・シフト」と呼んでおり、対決する状況においていくつかの非常に重要な機能を果たします。

1.   changer(変える人)がchangee(変えられる人)の立場――彼女の感情、防衛、理由を理解し、受容していること(もちろん、同意した訳ではありません)を伝えます。これにより、changee(変えられる人)が快くchanger(変える人)の立場を理解し、受容しようとする可能性を高めます(「彼女は私の話を聴いてくれている。私も彼女の話を聴こう)。
2.   ギア・シフトは、changee(変えられる人)の感情的な応答(傷ついた、恥ずかしい、怒り、後悔の念)をなくすのに役立ち、行動変容の可能性のための道を開いたり、後程説明しますが、相互に問題解決するための道を開いたりします。
往々にして、changer(変える人)の態度に変化をもたらす結果となります。以前は、相手の行動が受容できないものであったのが、それを受容できるようになります。(「あぁ、あなたがなぜ患者の呼び出しライトに気づかなかったのかわかりました。見えなかったのですね。」)

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