[ニュースレター] 2020年7月号

─2020年7月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑬」

Date: July 4, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

問題解決者としてのリーダー

 

グループ・リーダーの主要な役割は、問題解決の促進者であると考えることが、私にとっては役に立ってきました。グループは、メンバーの問題が解決されるように責任をもって面倒をみてくれるリーダーが必要です。ある人は、全く問題のない職場にはリーダーは不要である――少なくとも、あまり頻繁には必要ではない──と主張するかもしれません。もし、グループがいつも効率的に、そして生産的に機能しており、メンバーが常に達成感、結束力、高い自尊心や個人的価値を経験しているのなら、「スーパーバイザー」がほとんど必要ないことは明らかでしょう。グループに問題がある時にだけ非常にリーダーを必要とします。つまり、メンバーが自分の個人的なニーズを満たすことができずに問題を抱えている時や、組織の目標が達成されずにグループがリーダーに問題を抱え込ませる時です。

私はこれら2 種類の問題の関係を、私が発案した「行動の窓」と呼ぶ図形で表わしてみました。この図表はマズローとハーツバーグから引き出されたすべての概念を結び合わせるのに役立ちます。少しの間、自分がグループ・リーダーの立場になったと考え、グループ・メンバーの一人を観察する時に、その人の行動が常にあなたの目の前にある四角い窓を通して見えていると想像してみましょう。次にその窓は二つの部分からなっていると想像してください。1 つはグループ・メンバーの行動で、あなたに問題を引き起こしていないので、あなたにとっては受容できる行動です(あなたの行動の窓の一番上の部分)。もう1 つは、その行動があなたに問題を引き起こしているので、あなたにとっては受容できない行動を示します(あなたの行動の窓の一番下の部分)。

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[ニュースレター] 2020年6月号

─2020年6月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑫」

Date: June 7, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

人がグループに求めるもの

 

 

 (前出の関連箇所)「不満要因」がないことそれ自体ではめったに満足感を生み出しません。たとえば、労働条件がいいからといってそこから満足感が生まれるということはめったにないでしょう。しかしながら、劣悪な労働条件は実際に不満の感情を生み出しました。そして、満足要因(達成、承認など)があることでのみ、満足感がもたらされたのです。(前出の関連箇所、終わり)

このような顕著な研究結果は、組織の下のレベルで働く人たちには全く同じようには適用できないかもしれません。レベルⅠやⅡの欲求が満たされていない(低賃金、不安定な仕事である)場合、彼らは恐らく非常に強い欠乏感を抱くはずです。その結果、このようなグループのリーダーは、グループ・メンバーが賃金に不公平感を抱いていたり、雇用の安定について不安を感じていたりするかも知れず、その徴候を無視することが絶対にできないのです。

 ハーツバーグの調査結果に匹敵するものに、テキサス・インスツルメンツの産業心理学者M・スコット・マイヤーズの6 年間にわたる動機づけ行為に関する研究があります。 その結果は、「ハーバード・ビジネス・レビュー」において次のように要約されています。

 

従業員が効果的に働くよう動機づけるものは何でしょうか?それは達成感、責任感、成長、昇進、仕事そのものの面白さ、そして承認を得られたと感じることができるようなチャレンジングな仕事です。従業員に不満を与えるものは何でしょうか?ほとんどの場合、それは仕事の周辺の要因で、就業規則、照明、休憩時間、肩書、年功序列、賃金、福利厚生といったものです。

従業員が不満を感じるのはどのような時でしょうか?それは、有意義な成果を挙げる機会を奪われてしまったり、職場環境に敏感になったり、あら探しをし始めたりする時などです。

 

 マイヤーズはハーツバーグと同様に、スーパーバイザーが満たしてあげなければならない従業員のニーズで同じ種類のもの2 つを特定しました。それらは、モチベーション・ニーズとメンテナンス・ニーズです。前者は課題中心で、後者は相対的に仕事の周辺に関わるものです。

 マイヤーズの研究は、私がずっと強調してきたポイントの有効性を確認してくれました。すなわち、効果的なスーパーバイザーは、仕事のスペシャリストとしてのスキル(仕事のプランニングと整理をするスキル)だけでなく、人間関係のスペシャリストとしてのスキル(メンバーの不満の原因を見つけ解決するスキル)も持たなければなりません。効果的なリーダーは、仕事中心であると同時に、人間中心でもあるのです。グループ・メンバーは誰でも勝ち組にいたいと思っていますが、そのために自分の価値や自尊心を犠牲にしようなどとは、決して思ってはいません。

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[ニュースレター] 2020年5月号

─2020年5月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑪」

Date: May 16, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

人がグループに求めるもの

 

 

ニーズを満たすのに障害となるもの(「不満要因」)には、次のようなものがあります。

 

  1. 上司とのよくない人間関係
  2. 同僚とのよくない人間関係
  3. 不適切な技術的指導
  4. 劣悪な社内規定やアドミニストレーション
  5. 劣悪な労働条件
  6. 従業員の個人的生活における問題

 

ニーズを満たすもの(「満足要因」)には、次のようなものがあります。

 

  1. 達成
  2. 承認
  3. 仕事そのもの
  4. 責任
  5. 昇進

 

 「不満要因」がないことそれ自体ではめったに満足感を生み出しません。たとえば、労働条件がいいからといってそこから満足感が生まれるということはめったにないでしょう。しかしながら、劣悪な労働条件は実際に不満の感情を生み出しました。そして、満足要因(達成、承認など)があることでのみ、満足感がもたらされたのです。

 これらの研究がはっきりと示唆していることは─―そしてこれは、リーダーにとって非常に重要なことですが─―グループ・メンバーが高い生産性へと動機づけられ、同時に仕事に満足するためには、仕事自体がやりがいのあるものでなければならないということです。その仕事は成長、責任、承認、そして昇進の機会を与えるものでなければなりません。これらの必要条件は、マズローのレベルⅢ、Ⅳ、そしてⅤの欲求に非常に類似しており、効果的なリーダーは、グループ・メンバーが最高レベルのニーズ――仕事上の達成や、その達成の承認から得られる自尊心、そして自己実現(自分の可能性が役に立っているという感覚)――を満たすのを可能にするスキルとメソッドを十分に学ぶ必要があるという前述の私の主張をサポートしています。これらのスキルとメソッドについては後の章で詳しく紹介いたします。

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[ニュースレター] 2020年4月号

─2020年4月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑩」

Date: April 5, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

人がグループに求めるもの

 

  1. グループや組織は、必ずしもそのメンバーにレベルⅣやレベルⅤの欲求を満たす機会を与える訳ではありません。特に低いレベルにいる人たちで、仕事がかなり厳密に定義もしくはルーティン化されていたり、その活動がほとんど完全にコントロールされていたり、個人的な指示、意思決定やイニシアチブをとる自由度がかなり制限されていたりする場合はそうです。
  2. リーダーが任意に権力を行使する時、グループ・メンバーは、仕事について非難されることを恐れたり、職務で絶えず不安を感じたりするかも知れません。彼らの安心と安全の欲求が満たされていないと、レベルⅡで行き詰り、社会的欲求や能力と自尊心の欲求を満たすために達成しようとする動機づけがなされません。
  3. 異なるグループ・メンバーは、同時にあるいは同じ状況下にあっても、人によって異なる欲求のレベルで仕事をしているかも知れません。スタッフ・ミーティングで、ある人は疲れているかもしれません(レベルⅠ)が、別の人はグループが何かを達成することを望んでいるかもしれません(レベルⅣ)。また、他の人たちはお互いに話したり冗談を言っていたりするかもしれません(レベルⅢ)。
  4. レベルⅠとレベルⅡの欲求は、現代の豊かな社会ではめったに強力な動機づけにはなりません。なぜなら、グループ・メンバーの生理的欲求はほとんど満たされており(最低賃金法)、解雇される不安もありません(労働組合による保護)。だから、リーダーが、グループ・メンバーに解雇すると警告したり脅したりして、モチベーションを上げようとしても、またコントロールしようとしても、めったにうまくいきません。
  5. もし従業員が、仕事の上でレベルⅢ、ⅣないしレベルⅤの段階の欲求を満たす機会がほとんどないとしたら、彼らは仕事以外で(スポーツや趣味、社交クラブなどを通じて)、社会的インタラクション、達成感や自己実現の欲求を満たす機会を探すでしょう。こういう訳で、多くの人は仕事を維持して給料を得るために必要な最低限の労力しか費やしません。それに加えて、彼らは組織の中で疎外感を感じていたり、関与していないと感じていたりします。
  6. 素晴らしい成果と高度な達成感へと動機づけられるためには(レベルⅣ)、メンバーは次のような責任を果たしてくれるリーダーが必要です。 (a) 公平だと思える賃金が受け取れる (b) 職の安定が感じられる(c) グループが社会的インタラクションや友情をはぐくむ機会、また、理解され受け入れられていると感じる機会を与えてくれる(レベルⅠ、Ⅱ、Ⅲの欲求が満たされる)。
  7. グループの問題解決や意思決定に参加させてくれるリーダーを持つことでメンバーが得られる主な利益として、こうした活動から社会的インタラクションの欲求(レベルⅢ)、組織における自尊心や地位への欲求(レベルⅣ)、そして時には自己実現や自己開発の欲求(レベルⅤ)を満たす機会をメンバーに与えることができます。

 

 マズローの概念に改良を加えることで、リーダーはグループ・メンバーのニーズに対する洞察をより深めることができます。それは、フレデリック・ハーツバーグの研究から発展した二要因理論です。彼は、相対的に独立した2 つの要因が存在する証拠を収集しました。(1) 仕事を一緒にするグループの状況では、ある要因はニーズを満たすのに障害となり、イライラの原因または「不満要因」となります。(2) もう一方の要因は、ニーズを満たす供給者とみなされ、ニーズを満たすもの、または「満足要因」となります。

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[ニュースレター] 2020年2月号

─2020年2月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑨」

Date: February 25, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

(L.E.T. bookからの引用)

人がグループに求めるもの

 人間の欲求を表わすのに役立つ方法として、いくつかの異なるレベルを持つヒエラルキーで表現するものがあります。この分野において先駆け的心理学者のアブラハム・マズローは、個人における5 種類の異なる欲求に関して、その相対的重要性を示した5 つの層からなるピラミッドを構築しました。

 レベルⅠの欲求、たとえば飢えや渇き、暖かさなどは、最も重要(あるいは「非常に優勢」)で、人が次のレベルにおける欲求を満たそうとするためには、まずそれらが優先的に満たされていなければなりません。レベルⅡの欲求(安心と安全)も、さらに上のレベルの欲求を充足しようとするためには優先的に満たしておかなければならず、ピラミッドの上へ行っても同様です。たとえば、空腹な原始人は、生命の危険を冒してでも(安心と安全の欲求を無視しても)食べ物を得るために野生動物を追跡することに、強く動機づけられるでしょう。その野生動物を殺して、必要な分だけ食べたら、今度は安心の欲求を満たすことに動機づけられ、残った肉を保存処理し、将来の消費に備えるために貯蔵するかも知れません(安心と安全の欲求)。食べ物が十分に蓄えられると、次に彼は友人たちを呼んで食べ物をシェアするかも知れません(受容と社会的インタラクションの欲求)。これらの欲求が満たされると、食べ物をより新しい味付けで調理することを試してみようとするかもしれません(達成感と自尊心の欲求)。最終的に、これらの欲求が程よく満たされたならば、彼はきっと洞穴の壁に殺した動物の絵を描くことにするでしょう(自己実現の欲求)。

 マズローの欲求5 段階説の意味するところは、リーダーにとって非常に重要なものです。

 

 

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[ニュースレター] 2020年1月号

─2020年1月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑧」

Date: January 2, 2020 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

人がグループに求めるもの

 

グループ・メンバーの視点から見て、彼らのニーズが満たされるという希望が叶うようなことをしてくれることによって、グループのリーダーはリーダーシップのポジションを獲得します。もう一度強調すると、グループ・メンバーなしには、あなたはリーダーたり得ません。そして、グループ・メンバーがニーズを満たすのをあなたが助けてくれる時にだけ、彼らはあなたの指示や影響を受け入れてくれるのです。

とても単純なことのように聞こえますが、まずリーダーはグループ・メンバーが正確に何を必要としているのかを把握しなければなりません。そうして初めてリーダーは、グループ・メンバーのニーズを満たすために何をすべきかを判断でき、引き換えにグループ・メンバーは組織に対して一定の労力を提供し、あるいはその職務を果たすのです。この公平な交換がリーダーシップのカギとなります。

人びとはグループに何を求めるのでしょうか?初期における「科学的管理法」の専門家たちは、人は主に、個人的な収益のために働いているのだと考えていました。これは経済理論です。後に、人はグループから、それ以上のものを求めているという研究結果が立証されました――とりわけ、他のメンバーから認められること、達成感と成功感、他のメンバーとの社会的なインタラクション、グループに参加することから得られる社会的ステータスなどです。

ゆえに、社会経済理論の観点から考える方がより正確なのです。つまり、リーダーは、グループ・メンバーたちをグループに惹きつけておくだけの幅広いインセンティブを提供しているのだと認知する概念です。メンバーを生産的なグループ・メンバーとしてグループ内に保持しておくためには、効果的なリーダーはメンバーたちの単なる金銭的なニーズ以上のものを満足させる必要があります。

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[ニュースレター] 2019年12月号

─2019年12月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑦」

Date: December 22, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

リーダーのジレンマ

 

階層制の組織におけるリーダーシップに関した数多くの研究では、効果的なリーダーは、自分自身のニーズ(そして、彼らの上司のニーズである生産性と効率性)を満たすためのスキル・セットが1つ必要であり、グループ・メンバーのニーズを満たすためにはもう1 つのまったく異なるスキル・セットが必要であると強く指摘しています。さしあたり、これら2 つのスキル・セットを非常に一般的な言葉で表現してみましょう。

 

 A. グループ・メンバーのニーズを満たすスキル

   (1) グループ・メンバーの自尊心と個人的な価値を高める行動

   (2) グループの結束力とチーム精神を強める行動

  B. 組織のニーズを満たすスキル

   (1) 生産性とグループ目標の達成を刺激する行動:生産性を刺激してグループ目標達成意欲を高める行動

   (2) グループ・メンバーの目標達成を支援する行動:プランニング、スケジューリング、調整、問題解決、資源の提供

 

効果的なリーダーは「人間関係のスペシャリスト」(メンバーのニーズを満たすこと)だけであっても、あるいは「生産性のスペシャリスト」(組織のニーズを満たすこと)だけであっても十分ではありません。効果的なリーダーは、その両方でなくてはならないのです。さらに重要なこととして、効果的なリーダーは、グループ・メンバーのニーズとリーダーのニーズの両方を満たすためには、いつ、どこでこれらの多様なスキルを使うのかということを知るだけの柔軟性やセンシティビティといったものも習得しなければなりません。最後に、効果的なリーダーは、これら2 つの競合するニーズの源泉の間に生じる、避けられない対立を解決するためのスキルを学ぶ必要があります。

 『リーダー・エフェクティブネス・トレーニング』(2019)は、相互ニーズの充足という最も重要な状態を作るのに、どのようにしたらより効果的に作れるようになれるのか、上司や自分のグループ・メンバーとのより誠実なコミュニケーションの醸成を通じて、どのようにしたらより柔軟でセンシティブになれるのか、他者との人間関係における憤り、敵意、疎外感を大幅に軽減するための公平な(あるいは「No-Lose」の)対立解決法を用いるにはどうしたらよいかをリーダーの方々に示すことを目的としています。

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[ニュースレター] 2019年11月号

─2019年11月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑥」

Date: November 17, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

リーダーのジレンマ

 

また、組織内で働くすべてのリーダーたちの最も強いニーズの1 つには、自分自身の上司の目にはよく映りたいということもあるでしょう。リーダーの自尊心は上司からのインプットや評価に、その大部分が由来します。さらに重要なのは、リーダーが上司の期待や目標に沿わなかった場合(組織が目標を達成するための支援を効果的にしていると認められなかった場合)、彼らは降格や解雇といった脅威に晒されることでしょう。

 したがって、フォーマルな組織の中で働いているリーダーはジレンマに陥ります。彼らは、組織のニーズを満たすのと同時に、グループ・メンバーのニーズを満たさなければならないのです。そのための秘訣は、いかにして双方向からのニーズのバランスをとるかを学び、上司とグループ・メンバーの双方から効果的な人であると認められるようになることです。フォーマルな組織で働いたことのある人なら誰でも分かっていることですが、これは簡単な課題ではありません。なぜならば、組織のニーズが主に生産性と効率性の向上である一方、グループ・メンバーのニーズは、時として生産性や効率性の向上をめざすためのプレッシャーに抵抗することだからです。

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[ニュースレター] 2019年10月号

─2019年10月号─「地位に就くだけではリーダーではない⑤」

Date: October 22, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

リーダーのジレンマ

 

グループ・メンバー* のニーズを満たすことを通じてフォロワーの心をつかむことだけが効果的なリーダーシップのすべてではありません。反面では、リーダー自身も自分自身のニーズを上手く満たさなければならないのです。

グループ・メンバーのニーズを満たすためだけにリーダーシップのポジションに就きたいと思う人はめったにいません。リーダーも人間です。彼らもまた、地位、業績、より高い給料、承認、自尊心、保障、そして受容といった普通の人間としてのニーズを持っています。実際のところ、大抵はグループ・メンバーと同じニーズです。リーダーシップのポジションにいながら、これらのニーズを満たす方法が見出せなければ、その地位に長く留まりたいとは思わないでしょう。たとえ、リーダーが自分のニーズの多くが満たされないことがわかっていながら、我慢して長くその職を続けようとしても、すぐに、自分のグループ・メンバーのニーズが満たされるようすべきことを全力で努力しようとしても、それができない自分に気づくはずです。

 その説明は単純明快です。人は「お互いの利益」が得られると感じた時にのみ、他人のためになることに労力を使い続けます。人間関係において一方だけが利益を得るのには必ず限界があります。「魚心あれば水心」ということわざからも、この原則が理解できます。

 「満たされたコップの原則」もまた、ここでは作用しています。他人に与え続けることを可能にする(自分のコップから他人に水を飲ませ続ける)ためには、私は水が満たされたコップを持っていなければならず、また、水を補給し続ける(自分のコップを相対的に満たしておく)方法を見つけなければなりません。この原則の重要性については、援助を専門とするプロの間でよく理解されています。というのも、彼ら自身が私生活でのトラブルや、ニーズが満たされずに欠乏状態を経験している時、他人を援助する能力が非常に低下することに気づくからです。ですから、多くのプロのセラピストたちは、自分たちのコップを相対的に満たしておけるように、自分のためのセラピストを雇う必要性を感じているのです。

 

 

* この本を通して、私は「グループ・メンバー」「チーム・メンバー」「従業員」という言葉を同義語として使用しています。また、リーダーについても「スーパーバイザー」「マネジャー」「上司」など様々な用語を使用しています。「上司」という用語は私としては好ましくありませんが、通用性があり、使用しないというのも全く非現実的なので、この本でも使用しています。

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[ニュースレター] 2019年9月号

─2019年9月号─「地位に就くだけではリーダーではない④」

Date: September 29, 2019 | BY Dr. Thomas Gordon

 

(L.E.T. bookからの引用)

 

リーダーとは何か?

 

多少単純化し過ぎているかも知れませんが、下記に挙げるものが、リーダーがどのようにフォロワーの心をつかむのかについての説明となります。

 

  1. すべての人は生き延びるためにニーズを満たし、緊張を和らげようと絶えず努力をします。
  2. ニーズを満たすためにはちょっとした手段(道具、食べ物、お金、体力、知識、情報など)が必要です。
  3. 個人のニーズの大半は、人やグループとの人間関係で満足されます。だから、人やグループは、私たちがニーズを満たすために最も頻繁に頼る手段になります(私たちは自分たち自身の食べ物を育てないし、衣服も作らないし、教育も自分で施してはいません)。
  4. 人は、自分のニーズを満たしてくれる手段を持っている人との人間関係を積極的に探し求めます。
  5. 人びとがグループに加わるのは、そのようなメンバーシップが彼ら自身のニーズを満たす手段を提供してくれると期待するからです。逆に、ニーズが満たされなくなるとグループから離脱していきます。
  6. グループ・メンバーは、リーダーが彼らのニーズを満たす手段を持っている人だとみなした場合に限り、そのリーダーの影響と指導を受け入れます。人はニーズやウォンツ(欲望)を与えてくれると信じているリーダーについていきます(そして、命令にしたがって行動します)。

 

したがって、グループ・メンバーの観点から見て「リーダーについていく」ことで自分たちのニーズが満たされるということが約束される時に限って、リーダーはリーダーとしての地位に値し、維持することができるということになります。「リーダー・エフェクティブネス・トレーニング」の本では、リーダーがこの約束を現実のものにするために欠かせない重要な心構え、スキル、メソッド、そして手順を特定(明確化)し、説明しています。効果的なリーダーシップを身に付け、維持できるようになる人がいる一方、それができるようにならない人もいるということは、もはや不思議なことではありません。調査と観察を通じて、社会科学者たちは効果的なリーダーシップの重要な必要条件の多くを特定しました。私の狙いは、リーダーになりたい人により分かり易く、より使いやすくするために、この知識をまとめることです。

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