─2025年12月号─「あなたは私の話を聞いていない!」
Date: November 6th, 2025 | BY Michelle Adams
もしあなたが人間であるなら、これをこれまでに何度も、場合によってはたくさん、あるいは多すぎるほど耳にしてきたはずです。
「聴くことの重要性」について書かれた本、ワークショップ、ブログ、ポッドキャストなどは山ほどあります。そしてその多くで、アクティブ・リスニングが取り上げられ教えられていますが、残念ながら、その説明や教え方が正確でないことも多々あります。
ここで、アクティブ・リスニングの創始者であるカール・ロジャーズ博士が本来意図した概念を明確にしておきましょう。
アクティブ・リスニングをしているとき、あなたは単に、相手が言っていることやそのことについて相手がどう感じているかについて、自分の言葉で自分が理解したことを返しているだけです。そこには助言も、解決策も、誘導する質問も、安心させる言葉もありません。つまり、コミュニケーションのロードブロックは一切含まれません。アクティブ・リスニングは「オウム返し」や「言い換え」でもありません。
(ロジャーズ博士の友人であり、弟子であり、同僚であったトーマス・ゴードン博士が行った重要な貢献は、アクティブ・リスニングを「いつ、どのように使うのか」まで含めてゴードン・モデルの中に体系化したことです。そして今日アクティブ・リスニングが広く知られているのは、1962年にゴードン博士が開発した P.E.T. プログラムのおかげなのです。)
さて、それでは次に進みましょう…。
アクティブ・リスニングに加えて、あなたが相手の話を聴き、注意を向けていることを示す別の方法があります。ゴードン・モデルではこれをベーシック・リスニング/パッシブ・リスニングと呼びます。
以下は、ベーシックに聴くための方法です。
・注意を払う行動(Attending)
相手とともにいること。相手に身体的に注意を向けること。水平な視線で目を合わせ、開かれた姿勢で聴くこと。「注意を払う行動」は、効果的なリスニングに欠かせません。
・沈黙(Silence)
パッシブ・リスニング。相手が話している間、静かに聴くこと。特に相手が悲しみを感じているとき、沈黙は非常に強い力を持ちます。
・ドア・オープナー(Door Openers)
相手がもっと発信できるよう促す開かれた招待表現(例:「もっと話したいですか?」「話したければ聞きますよ」「よかったら続けてください」など)
・簡単受容(Acknowledgment)
評価を含まない反応で、相手に「聞いています」という心理的メッセージを送るもの(例:「ふむ」「本当?」「はい」「なるほど」など)。簡単受容は、相手に心理的に寄り添っていることを示します。
- 沈黙や非コミット的な簡単受容は、相手がさらに話すことを効果的に支援します。
- ドア・オープナーはコミュニケーションの最初の段階で特に効果的です。状況づくりになります。
- これらは、「ボールはあなたのところにあります」「あなたが送り手。私は受け手です」「あなたの話を聴きたい」「続けてください」というメッセージを伝えます。
しかし…… ベーシック・リスニングだけを使う場合のデメリットもあります。
- 相互作用がないため、相手はあなたが本当に理解しているかどうかわかりません。
- 相手は自分のメッセージがあなたに受容されているのか、非受容なのかわかりません。
- 相手がさらにコミュニケーションを続けることを促進できません。
アクティブ・リスニングが提供するものは、理解(共感)の証拠です。
さらに、アクティブ・リスニングには次の働きがあります。
- 自分の「理解(デコーディング)」が正確かどうか確認できます。
- 送り手に「私はあなたという人間に関心があります」というメッセージを伝えます。
- 単に「聞いた」だけでなく、「理解した」という証拠を示します。
- 問題を抱える相手を受容できることを示します(完璧でなくても受容できる)。強い感情や考えを持つ相手の存在を受容できます。
※ここでのキーワードは “受容(accept)” であり、“同意” ではありません。
相手が持っている感情や考えにあなたが同意していなくても、相手がその感情・考えを持っていることを受容できるのです。そのうえで、相手に問題解決のプロセスを持たせることができます。 - 相手が気持ちを吐き出し、安心し、カタルシスを得る機会を与えます。感情が表現され受容されると、感情は圧倒的ではなくなります。抑え込まれた感情は強く残り、むしろ悪化します。
- 相手が自分自身で問題を定義し、解決することを支えます。責任は相手に残り、聴き手は関わり続けます。
- 「感情の洪水」を減らし、知性を働かせる余裕が生まれます。
- 相手が表面的な問題から、より深い根本の問題へ進むことを促します。
- 相手の焦点を「外側」から「自分自身」へ移すことが多いです。
- 「見せかけの問題」に飛びついて「解決」することを避けます。
- 事実だけでなく、相手の感情に向き合わせることを促します。
- 新しい洞察——新しい見方、新しい態度、新しい行動、自分自身への新しい理解——を育みます。
- 相手があなたに対してよりオープンで正直になり、あなたを支援者として使いやすくなります。
- より生産的で報われる関係を促進します。話し手は聴き手に温かさや肯定的感情を持ち、聴き手は相手をより理解することで肯定的な気持ちを持ちます。
- 相手が内的問題解決者として成長し、他者に依存せず、自分自身で責任を持ち、方向づけられる存在へと成長していきます。
- 課題中心の問題解決の場面でのアクティブ・リスニングは、問題をより早く、より正確に見つける手助けになります。時間の節約にもなり、より適切な解決につながります。
- 行動の窓のすべての行動が「生産的な仕事の領域」にあるとき、リーダーからの指示や説明に対するアクティブ・リスニングは、誤解を減らし、コストのかかるエラーを防ぐ効果があります。
ですから、次に誰かから「あなた、全然話を聞いていない!」と言われたときには、一度立ち止まり、ベーシック・リスニングとアクティブ・リスニングを使ってみてください。
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